2026年5月25日、北海道に新しいチームが誕生した。
その名も**「ヒグマ駆除対応プロジェクトチーム」**。北海道警察が発足させた、警察官がライフル銃を使ってヒグマの駆除に当たる専門チームだ。
「警察官がクマをライフルで撃つ」——字面だけ見ると映画かゲームの話みたいだが、これは現実の話だ。しかも全国6例目というから、他の都道府県でもすでに同じことが起きている。
なぜ、こういう事態になったのか。そして北海道のヒグマ対策は、これからどう変わっていくのか。まとめてみた。
そもそも、なぜ今まで警察官が撃てなかったのか
「警察官がいるんだから、クマが出たら撃てばいいじゃないか」と思う人もいるかもしれない。
でも現実はそう単純ではなかった。
これまでクマの駆除は、主に猟友会のハンターが担ってきた。市町村から依頼を受け、現場に駆けつけて対応する。だがここ数年、そのシステムに深刻なひびが入っていた。
2018年、北海道砂川市でヒグマを駆除したハンターが、その後まさかの猟銃所持許可取り消し処分を受けた。市職員と警察官が立ち会い、適切に駆除したはずが「銃弾が住宅に届く恐れがあった」として処分された。現場で問題なしと判断した警察官が後になって裏切るような話で、ハンターコミュニティに衝撃が走った。
「協力する奴なんていなくなるだろ」——そういう空気が広がった。実際に各地の猟友会が駆除要請を断るケースが続出し、苫小牧市では市がクマ駆除の依頼に対して引き受ける猟友会を探せない事態まで起きた。
**クマは増えているのに、撃てる人がいなくなる。**これが2024〜2025年に深刻化した問題だった。

2025年秋、ついに政府が動いた
2025年10月、木原官房長官が「警察官によるライフル銃を使ったクマ駆除の検討を警察庁に指示した」と発表した。人身被害が深刻な北海道と東北6県を想定した対策で、政府としても「もう猟友会だけに任せていられない」という判断に至ったわけだ。
それから約7ヶ月。2026年5月25日、北海道警がついに「ヒグマ駆除対応プロジェクトチーム」の運用を開始した。
メンバーは、警備部機動隊の銃器対策部隊だ。テロ対策や重大事件に備えて訓練を積んだ精鋭たちが、今後はヒグマ対応も担う。使用する武器はライフル銃。普段は人間相手に備えているチームが、クマにも対応するという、なかなか想像しにくいが現実的な体制だ。
出動するのは、市街地で人身被害が発生し、自治体などによる対応が難しい緊急時に限られる。日常的にパトロールするわけではなく、いざというときの「最後の手段」として機能する想定だ。

最近の北海道、クマの出没はどんな状況か
「そんなに深刻なの?」と思う人のために、最近の状況を整理しておく。
今年5月だけでも、苫小牧市でクマの姿や足跡が8件確認され、市が「警察に通報を」と呼びかけた。猿払村では牧草地に親子グマが出没して箱わなが設置された。札幌市手稲区の住宅街の花壇には、クマのような足跡が見つかった(後にクマの可能性は低いとされたが)。
そして今まさに話題になっているのが、千歳JALマラソンの中止問題だ。クマの出没懸念でマラソンが中止になったコースについて、専門家たちがクマの移動経路の分析を始めている。「マラソンがクマで中止になる」という状況が、北海道では現実として起きている。
「ガバメントハンター」という新しい仕組みも
警察チームの発足と前後して、政府は別の対策も動かしている。**「ガバメントハンター」**だ。
狩猟免許を持つ自治体職員を確保し、公務として駆除に当たらせる仕組みで、民間ハンターへの依存を減らすことが狙いだ。猟友会のハンターが高齢化・減少している問題への対応でもある。
「行政がハンターを雇う」というのは一見新しい発想に聞こえるが、実は北海道内の一部自治体では似たような取り組みがすでに始まっていた。それを全国制度として整備しようというわけだ。
クマ対策の「三段構え」
現在の北海道のクマ対策は、おおまかに三段構えになってきた。
第一段階:予防と追い払い 出没情報の共有(札幌市公式LINEなど)、電気柵の設置、コンポスト管理など。クマを呼び込まない・近づけない対策。
第二段階:猟友会・ガバメントハンターによる駆除 出没が確認された場合の通常対応。依然として主力だが、担い手不足が課題。
第三段階:警察ライフルチームによる緊急駆除 市街地での人身被害発生など、緊急かつ通常手段では対応困難な場合の最終手段。
この三段構えが揃ったことで、「クマが出ても誰も動けない」という最悪の状況は回避しやすくなった。でも根本的な問題——クマと人間の生息域が重なっていること——は変わっていない。
「クマが悪いわけではない」という前提
最後に少しだけ。
ヒグマは増えすぎているが、それは人間側の環境変化(山林の管理放棄、農作物の放置など)が引き起こした面も大きい。駆除は必要だが、「クマが増えた=クマが悪い」という単純な話ではない。
北海道のヒグマ対策は今、「共存」から「管理」へと軸足が移っている。警察がライフルを持つ時代になったことは、そのシフトが本格化した象徴かもしれない。
庭の果実を拾う、コンポストを管理する。市民にできることは変わらない。そういう小さな積み重ねが、クマと人間の距離を少しだけ遠ざける。
まとめ
- 2026年5月25日、北海道警察が「ヒグマ駆除対応プロジェクトチーム」の運用を開始した
- 銃器対策部隊がライフル銃で対応。全国6例目
- 背景には猟友会ハンターの減少・駆除拒否問題がある
- ガバメントハンター制度と合わせた「三段構え」の対策体制へ
- 今年5月だけで道内各地でクマの目撃・足跡情報が相次いでいる
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