突然ですが、北海道民の方に質問です。
「豆パン、全国で売ってると思ってましたか?」
おそらく9割の人が「え、違うの?」と答えるのではないだろうか。 それくらい、北海道における豆パンの存在は「空気」に近い。スーパーに行けば当たり前のように並んでいて、給食でも出てきて、コンビニにもある。
当たり前すぎて、疑いすら持ったことがない。
でも実は、豆パンが当たり前に売っているのは北海道だけだ。しかも発祥は北海道で、誕生のきっかけが「北大の教授と学生」というのだから、なかなかのドラマがある。
そもそも「豆パン」って何?

念のため説明しておくと、北海道の「豆パン」とは、コッペパンの生地に甘納豆(主に金時豆)をごろごろと練りこんで焼いた丸いパンだ。
甘い。素朴。以上。
という潔さがこのパンの魅力で、変なフィリングも特別なトッピングもない。パン生地と甘納豆、それだけで成立している。本州の人が見ると「え、これがパン?」となることもあるが、道民にとってはアンパン・ジャムパンと並ぶ菓子パンの三強のひとつだ。
スーパーに行けば複数メーカーのものが並んでいて、1軒のスーパーに8種類の豆パンが並んでいたという記録もある。「ご当地パン」というより「パンの種類」として北海道に定着している珍しい存在だ。
誕生は1940年。北大の教授が関わっていた
豆パンが生まれたのは1940年(昭和15年)のことだ。
札幌に「ロバパン」という製パンメーカーがある。今でも道民には馴染み深いメーカーで、創業者・石上寿夫氏がその年、創業10周年の記念商品を何にするか悩んでいた。
そこで相談したのが、常連客だった北海道帝国大学(現:北海道大学)農学部の教授と学生だった。
「小豆を煮たものをパンに入れてみては?」
この一言から、豆パンは生まれた。
北大の農学部が豆パンを生んだ。考えてみると、農学部らしすぎるアドバイスだ。「法学部だったら別のものを提案していたかもしれない」などと考えても意味はないが、なんとなく面白い。
当初は甘く煮た小豆を使っていたが、現在は金時豆の甘納豆が主流になっている。この変化も、北海道が金時豆の一大産地であることと関係しているのだろう。
なぜ「北海道だけ」になったのか
誕生した豆パンは、戦時中の食糧難のなかで「コメの代用食」としても重宝された。豆のカロリーと満足感がちょうどよかったのだろう。北海道の食卓に定着していくのに、さほど時間はかからなかったはずだ。
ではなぜ、全国には広がらなかったのか。
ロバパンによると、豆パンが北海道以外であまり売られていない理由は**「大正金時豆の生産量が限られていた」**からだという。つまり、材料の豆が北海道産に依存していたため、道外への展開が難しかったということだ。
「食材の産地が、そのままご当地グルメを生む」——北海道あるあるの構図が、パンの世界にも存在していた。
道民が「全国区だと思っていた」問題
2017年、テレビ番組で豆パンが「北海道限定のソウルフード」として紹介されると、全国から反論が殺到した。
「普通にうちの近所でも売ってるけど」 「大手パンメーカーも出してるし全国区だと思う」
……たしかに、豆を使ったパン自体は全国にある。表面に豆を並べた豆パンなど、他の地域にも似た商品は存在する。
でも北海道の豆パンが特殊なのは、「パンの種類」として定着している点だ。1軒のスーパーに8種類。スーパー、コンビニ、パン屋、給食と、あらゆる場所で「豆パン」として売られている。その浸透率は、全国の追随を許さない。
道民が「全国区だと思っていた」のも無理はない。それほど日常の中に溶け込んでいるのだから。
お赤飯にも甘納豆。北海道と甘納豆の深い縁
豆パンを語るうえで外せないのが、「北海道と甘納豆の関係」だ。
北海道民の甘納豆愛は豆パンにとどまらない。お赤飯にも甘納豆が入っている。
本州では赤飯といえば小豆や ささげを使うのが一般的だが、北海道では金時豆の甘納豆が入った甘い赤飯が定番だ。しかもそこにごま塩をかけて食べる。甘い+塩辛い、という組み合わせが道民には当たり前でも、本州の人には「え、甘いの?」と必ず驚かれる。
金時豆の大生産地である北海道だからこそ、甘納豆が食文化のあちこちに入り込んだ。豆パンはその最たる例というわけだ。

豆パンはどこで買える?
北海道内では以下の場所で手軽に買える。
ロバパン(元祖) スーパーやセブン-イレブンで購入可能。セブンでは北海道限定の7プレミアム商品として販売されている。
日糧製パン 道内大手メーカー。昔ながらの金時豆の甘納豆入り豆パンを販売。
セイコーマート(セコマ) 北海道のローカルコンビニ。甘納豆がごろんごろんと入ったボリューム感のある豆パンが買える。
北海道に来る機会があれば、有名な観光グルメだけでなく、スーパーやコンビニの豆パンコーナーをのぞいてみてほしい。1軒に何種類も並んでいる光景は、それだけで北海道らしさを感じられる。
まとめ:豆パン、あなどるなかれ
- 誕生:1940年、ロバパンが北大の教授・学生の提案で発売
- 材料:コッペパン生地+金時豆の甘納豆
- 北海道限定の理由:金時豆の生産量が限られていたため
- 北海道における立ち位置:アンパン・ジャムパンと並ぶ菓子パンの定番
- 関連する道民文化:赤飯にも甘納豆(甘い赤飯+ごま塩)
素朴で、地味で、特別なことは何もない。でも北海道民の食の記憶に深く刻まれているパン、それが豆パンだ。
給食で食べた記憶がある道民も多いはず。スーパーで何気なく手に取ったことがある人も多いはず。そのパンに、北大農学部と戦時中の食糧難と金時豆の産地が絡み合った歴史があるとは——豆パン、あなどるなかれ。
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