【札幌の冬】無意識にやってしまう「5つの奇習」と引き戸のマナー

玄関で雪を払う ひとりごと

札幌の冬。そこには、教科書には載っていない、しかし全市民が共有している「生存のためのプログラム」が存在します。

今回は、他県の人から見れば不思議に見えるけれど、私たちにとっては当たり前すぎる「冬の5つの奇習」をまとめました。


傘を捨て、フードを信じる

吹雪の中でも、札幌市民は傘をさしません。理由は至ってシンプルで合理的です。

  • 雪は「払えばいい」: 気温が低いので雪がついても濡れない。乾いた雪は屋内入り口で払う。これが鉄則です。
  • 両手の自由を確保: ツルツル路面で転倒した際、傘を持っていると受身が取れず致命傷になります。

深くかぶったフードは、傘よりも視界を確保し、耳を守り、転倒のリスクを最小限に抑える、札幌市民にとって最強の装備なのです。

風除室(ふうじょしつ)での「敷居」の儀式

建物に入る瞬間の動きは、もはや洗練されたスポーツのようです。

特に玄関の前に風除湿の引き戸がある場所では、「敷居の溝」に全神経を集中させます。溝に雪を落とすと、雪が詰まり、ドアが最後まで閉まらなくなるからです。

【札幌流・雪払いの作法】

  1. 風除室のドアを開けたら、ドアの敷居に雪を落とさないように入る。
  2. ドアの敷居を確認したら出来るだけ早くドアを閉める。フードを脱ぎ、「パンパンパン」全身の雪を素早く掃い落とす。
  3. 靴の裏の雪も「トントン」と落とすと同時に、ドアがきちんと閉まっているのを確認。

「ドアを最後まで閉めきる」という執念。数センチの隙間から入り込む冷気が、どれほど建物内の温度を奪うかを知っているからこその行動です。
吹雪の時にはこの風除室のドアを閉めた瞬間、それは生還を意味します。前が見えないほどの吹雪から解放され、ほっとする瞬間でもあります。

全神経を足裏に集める「ペンギン歩き」

冬の路面は、日々コンディションが変わります。札幌市民は無意識に、一歩目の接地感だけでその日の「滑り具合」を即座に判断します。

ツルツルだと確信した瞬間、歩幅を狭め、足裏全体で地面を捉える「ペンギン歩き」に切り替わります。おしゃれなウォーキングは春までお預け。滑らないことこそが、冬の正義です。

地下歩行空間(チカホ)への圧倒的信頼

地上にどんな絶景やイベントがあろうとも、冬は頑なに「チカホ」を直進する。
「雪がない、滑らない、風がない」という環境が、どれほど精神を安定させるか。冬のチカホは、札幌市民にとっての「聖域」である。

ロードヒーティングへの「無言の感謝」

雪の下にアスファルトが顔を出している場所を見つけると、誰に言われるでもなく吸い寄せられます。多少遠回りになっても、ロードヒーティングで黒いアスファルトを選んで歩く。
それは、精神的な平穏を保つための最適解なのです。

かつては一般の家庭の玄関先でもロードヒーティングされている家を見かけることがありましたが、昨今は燃料費の高騰もあり見かけることが少なくなりました。
札幌の繁華街やオフィス街でロードヒーティングされている歩道の上を歩くとほっとします。


まとめ|「諦め」と「気遣い」で冬を越す

札幌市民が冬に怒らず、静かにこれらを行っているのは、自然には勝てないという「諦め(達観)」と、共にこの街で生きる人々への「小さな気遣い」があるからです。

一見すると奇妙なこれらの行動も、すべてはこの厳しい冬を平然と、そして暖かく過ごすための知恵。明日もまた、札幌の風除室では、静かに敷居を避けて雪を払う音が響きます。

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