前回、細めの木で作った本支柱にしっかりと固定され、無事に紫色の綺麗な一番花を咲かせてくれた我が家のナスたち。
本州の梅雨前線のニュースを横目に、ここ札幌のカラッと爽やかな初夏の風を浴びながら順調に生長を続け……ついに、待ちに待った瞬間がやってきました。花の跡から、ツヤツヤと黒光りする小さな小さなナスの赤ちゃん(一番果:いちばんか)が顔を覗かせたのです!
「あぁ、なんて愛おしいんだ。早く立派な麻婆ナスサイズになっておくれ」と、我が子の誕生を祝うフォトレポートを投稿したいところなのですが……。実はここから、家庭菜園初心者が最も心を痛める「菜園界の非情な掟」が執行されることになります。

心を鬼にして。一番果「涙のピンポン玉サイズ収穫」
せっかく成った最初のナス。普通なら「どこまで大きく育つかな?」と限界まで引っ張りたくなるところですが、ベテラン菜園家たちは口を揃えてこう言います。「一番果は、小さいうちに容赦なくハサミを入れろ」と。
そう、まだピンポン玉か、せいぜい手のひらにすっぽり収まるくらいのサイズで収穫してしまうのが、ナス栽培における最大の鉄則なのです。
なぜそんな可哀想なことをするのか?理由は、まだ今のナスが「絶賛・肉体改造中」の発展途上の株だからです。人間に例えれば、まだ中学生くらいの体力しかありません。そんな状態で「立派な実を最後まで育てる」という大仕事をさせてしまうと、株が完全にエネルギー切れを起こし、体力を使い果たしてその後の生長がストップしてしまうのです。
ここで最初の我が子をあえて早穫り(摘果)することで、株に「よし、まだ子育てに全力を出さなくていいんだな!じゃあ今のうちに自分の体をデカくするぞ!」と思わせ、根や茎をガッチリと育て上げることができます。「急がば回れ」。この涙の決断のおかげで、株は体力を温存し、秋が来るまで何十本ものナスを爆成りさせる「最強の母体」へと仕上がっていくのです。
というわけで、ハサミを持つ手が少し震えましたが、心を鬼にして「ポキッ」と収穫。採れたての一番果は、皮が信じられないほど柔らかく、浅漬けにして一口で美味しく命をいただきました。これぞ菜園家だけの、切なくも贅沢な特権です。
覚醒した肥料食いモンスターへ、最初の「貢ぎ物(追肥)」
さて、一番果を収穫したということは、ナス栽培においてもう一つの重大な局面を迎えたことを意味します。それは、「肥料食いモンスターの覚醒」です。
ナスは野菜界の中でもトップクラスに食欲旺盛(肥料が大好き)なことで有名ですが、実をつけ始めたこの瞬間から、その燃費の悪さは凄まじいものになります。放っておくと、あっという間に土の中の栄養を吸い尽くし、「おい、飯が足りねえぞ」と葉っぱの色を薄くして抗議してきます。
そこで、記念すべき第1回目の「追肥(ついひ)」を執行しました。
我が家での貢ぎ方(追肥ルール)は以下の通りです。
- 株元には絶対に置かない: 根の先端は、地上で葉が広がっているドームの真下あたりまで伸びています。そのため、株元に直接肥料をドカッと置くと「根焼け」を起こしてダメージになってしまいます。
- マルチの端をペロッとめくる: 我が家は黒マルチを敷いているので、通路側のマルチの端を少しめくり、通路の土とブレンドするように肥料を仕込みます。
- ボカシ肥をパラパラと: じわじわと長く効く有機質のボカシ肥(または化成肥料)を、一握り「いつもありがとう、たくさん成ってね」と念を込めながら撒き、土と軽く混ぜ合わせ(土寄せ)てマルチを戻します。
この追肥を、これからは「2週間に1回」のペースで定期的に行う無限お供えループが始まります。ナスの大好物である「水」と「肥料」を絶対に切らさないこと。これが、札幌の短い夏の中でナスを大豊作に導くための唯一の攻略法です。
夏に向けて、ギアを上げていく菜園
前回のトマトの「わき芽かき暗殺戦」に続き、今回のナスの「涙の早期収穫&貢ぎ物大作戦」と、6月下旬の菜園はとにかく人間側が仕掛ける仕込み作業が目白押しです。
でも、カラッと晴れた札幌の青空の下、土の匂いに包まれながら野菜たちの健康状態をチェックし、手をかければかけるほど、彼らは素直に、そしてダイナミックに応えてくれます。この忙しさこそが、家庭菜園の一番の醍醐味なんですよね。
しっかり栄養を補給し、身軽になった我が家のナスたち。これから7月の本格的な夏の太陽を浴びて、どれほど巨大な株に化けていくのか、今から本当に楽しみです。皆さんの畝のモンスターたちは、もうお腹を空かせていませんか?


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