6月14日の朝、北海道名寄市の住民が、ちょっとした「生態系のドキュメンタリー番組」を生で目撃することになった。
農作業に出ようとして外に出ると、うなり声。目を向けると、そこにいたのは体長約1.5mのヒグマ。そして、口にくわえていたのはシカだった。
教科書で習った「食物連鎖のピラミッド」が、まさかの実写化。しかも目撃者は専門家でも研究者でもなく、ただ朝の農作業に出ようとしただけの住民だ。
「いってきます」のつもりが、いきなり自然界の頂点対決を見せられる。北海道、油断ならない。

何があったのか、もう少し詳しく
現場は名寄市智恵文の牧草地帯。14日午前8時ごろ、農作業のため外に出ようとした住民がクマを目撃し、うなり声を聞いて目を向けるとクマはシカをくわえていたという。
クマはその後、南側の山林に立ち去り、現場は付近の建物から約200m離れた場所で、ほかにクマの痕跡は確認されていないそうだ。
200メートル。コンビニまでの距離感で、クマがシカを捕食している。これが名寄の朝だ。
警察はもちろん黙っていない。現場付近で警戒活動を実施しており、ハンターによる見回りも行われている。

【クイズ】これ、「よくあること」?「珍しいこと」?
ここでひとつクイズを挟みたい。
Q. ヒグマがエゾシカを襲って食べることは、北海道では「よくあること」でしょうか?「珍しいこと」でしょうか?
A. よくあること(日常的に起きている) B. 珍しいこと(目撃される機会自体が少ない)
正解は記事の後半で。
ヒグマの食事、9割は植物という事実
「クマ=肉食で危険」というイメージを持っている人は多いと思う。でも実態は少し違う。
ヒグマは雑食性で、食べ物の大部分は植物だ。フキ、ドングリ、ヤマブドウ、サケ、アリ、そしてエゾシカ。季節や地域によって食べるものは変わるが、肉食の比率はそこまで高くないというのが研究者の見解だ。
つまり今回のように「シカを捕食する瞬間」を目撃すること自体、実はそこまで頻繁にあるわけではない。多くの人がイメージする「肉食獣としてのクマ」の姿は、クマの日常のごく一部でしかない。

クイズの答え合わせ
先ほどのクイズの答えは——
B. 珍しいこと(目撃される機会自体が少ない)
クマがシカを捕食すること自体は北海道では確認されている行動だが、「人がその瞬間を目撃する」ことは稀だ。クマは警戒心が強く、捕食中の様子を人に見られる状況になることは多くない。
今回のケースが速報ニュースとして報じられたのも、まさにこの「珍しさ」が理由だろう。
エゾシカが増えすぎている、という別の問題
実はこのニュース、もうひとつ重要な背景がある。
北海道はエゾシカが増えすぎている。
農作物被害、交通事故、森林の食害——エゾシカの個体数増加は北海道にとって長年の課題だ。自然な天敵がほぼいない状態が続いていたため、行政が主導してハンターによる駆除を進めてきた歴史がある。
そこにヒグマという天敵が一矢報いている、という見方もできる。「クマがシカを食べてくれるなら、ある意味助かっているのでは?」というのは、農業従事者からすると一概に喜べない複雑な感情かもしれないが、生態系のバランスとしては興味深い現象だ。
クマも生きるために必死で、シカも増えすぎて困っていて、人間はその両方に頭を悩ませている。北海道の自然は、なかなか一筋縄ではいかない。
このニュースから学べること
ユーモラスに書いてきたが、実際に住宅地から200メートルでこういうことが起きているという事実は重い。
最近、北海道では警察によるライフル駆除チームの発足や、各地でのクマ目撃情報が相次いでいる。「クマは山にいるもの」という前提が、少しずつ崩れてきている。
牧草地帯や農地のすぐそばに住んでいる人は、改めて以下を確認しておきたい。
- 朝夕の屋外作業時は周囲の音や気配に注意する
- 鈴やラジオなど音の出るものを携帯する
- 出没情報は自治体の公式LINEなどでこまめにチェックする
- ゴミや収穫物の管理を徹底し、クマを引き寄せない環境を作る
「シカをくわえたクマ」というインパクトのあるニュースの裏には、北海道の自然と人間の距離感が、今まさに変化しているという現実がある。
まとめ
- 6月14日朝、名寄市智恵文の牧草地でヒグマがシカをくわえている様子が目撃された
- 現場は住宅から約200mの距離
- ヒグマの食事は植物が中心で、捕食シーンの目撃自体が珍しい
- 背景にはエゾシカの個体数増加という別の課題もある
- 警察・ハンターによる警戒活動が継続中
北海道の自然は、思っている以上にダイナミックに動いている。
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